バルトーク『ヴァイオリン協奏曲第2番』の演奏比較

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80.『ヴァイオリン協奏曲第2番』

第1番のほうが抽象的で、この第2番のほうがポピュラリティーがある。歌謡性とリズムの楽しさ。音楽の原初的な生命力に根ざした音楽と言えるだろう。そこに時代的な緊張感が加わる。それを歌う楽器ヴァイオリンでどのように描きわけるか、その興味が高まる。

メニューイン/ドラティ/ニューpo パールマン/プレヴィン/ロンドンso ズッカーマン/スラットキン/セントルイスso チョンキョンファ/ショルティ/シカゴso ムローヴァ/サロネン/ロスアンジェルスpo 五嶋みどり/メータ/ベルリンpo

●メニューイン。現役最晩年の録音で技術的な衰えが散見される。それはさておいて、線の細い音色が緊張感を自然に作り出している。ドラティの指揮を上書きしてくような一体感があり、過不足のない安定した表現。
●パールマン。伸びのある明るい音色。豊かな響きはそれ自体で充足、自足しているところがある。全体にブレヴィンの器用さに支配されているように感じる。
●ズッカーマン。朗々と息の長い歌を途切れなく歌いつづける。この演奏に触れて、はじめてこの曲が歌に溢れた音楽だということを知ることができる。歌の上手さというのは、先天的なと言いたくなる音楽のセンスで、音楽の構造も含んだ、聴衆とのコミュニケーションの道具としての理解が高いということだ。
●チョンキョンファ。好き嫌いは分かれるかもしれないが、歌の上手さではひけをとらない。むしろゆとりある演奏で色香まで感じさせる。そこが好悪の分かれ目だろうが。
●ムローヴァ。このヴァイオリニストは古楽器派に洗脳されるまで、めずらしく緊張感漂う演奏を得意とした。この演奏もその当時のもの。張り詰めた透明感のある音色で、抽象性と、現代もの特有の緊張感を一気に体現している。構成力もしっかりしていて、力強い演奏。サロネンの棒もこの独奏者の個性を得て、ようやく形になったというところ。
●五嶋みどり。ゆったりしたテンポでしっかり歌うけれど、線の細い音色と細部にいたるまでのあまりの丹念さで全体に神経質に感じられる。急速部分でのせっかちさが全体から浮いている。

メニューイン以外、皆、中堅からベテランの域に達した名だたる名手ばかり。どの演奏ももう20年前後昔の録音。この曲が若手の試金石となっていたようだ。たしかに、その効用はあるようで、ここに表れている音楽性は今も変わらず、その個性をより深めることにつながったようだ。