プロコフィエフ『ロミオとジュリエット』の演奏比較

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65.『バレエ音楽“ロミオとジュリエット”』

 ソフトバンクのコマーシャルで一躍有名曲の仲間入りを果たした。この曲は名曲なのに長らく定番の位置を得られなかった。それは、全曲版はやや間延び。かといって、組曲版、抜粋版は確定的なものがなく、指揮者によって組み合せが違っている。その定まらなさは、いい曲が多すぎるということでもあるのに、残念ながらマイナスに作用したようだ。

アバド/ロンドンso ムラヴィンスキー/レニングラードpo アンチェル/チェコpo サロネン/ベルリンpo デュトワ/モントリオールso フェドセーエフ/モスクワrso

●アバド。若いときのアバドのリズムの切れ味を見せつける演奏。テヌートをかけながらリズムアクセントを強くすることで、大地を踏みしめる東洋的な踊りのイメージが醸し出されている。曲ごとの面白さを徹底して追求していて、変化に富んだ飽きない演奏。
●ムラヴィンスキー。プロコフィエフらしさとか、シャープさは気にしていないアプローチ。主部は速く決然とした感じで、聴く側の襟を正させるもがある。一曲ごとの表情の変化が大きい。
●アンチェル。瞬発力、リズムのキレはトップクラス。モンタギュー家トキャプレット家のトリオ部分、Flデュオに大きなビブラートをかけさせていて、これが両家の先行きの不安をはっきり告げる音楽になりえている。 シンフォニックなバランスと気宇の大きさを感じさせる演奏でありながら、ところどころ、具体的な意味付けを盛り込んでいる。変則的でいて説得力の高い演奏。
●サロネン。全曲版。テンポやや遅め。筋を追う退屈さが表れている。リズムの切れがもう一つで、一曲ごとの性格の変化が弱く感じられる。
●デュトワ。全曲版。退屈さはサロネンに通じるものがある。ただ、オーケストラ・トレーナーとして最高の腕を持つ指揮者だけに、一曲ごとの面白さの強調させ方はうまい。細部までえぐり出してくれるので、新鮮に聞こえる良さもある。
●フェドセーエフ。組曲を中心に少し曲を足している。選んだ曲はストーリー順ではなく、ラブストーリーの甘いイメージのものから、悲劇調のものへと並べている。ブラスとティンパニーを景気よくならして、いつもながらの大盛り上がり。甘い部分も意外なことに本当に甘い。

 不思議に70年前後の録音が充実している。華やかなオーケストレーションの曲だから、最近の鮮明な録音のものの方がいいだろう、という期待はもろくも崩れてしまった。時代精神がプロコフィエフと合致していたということなのだろうか。ちょっとした謎。