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zoom RSS くれなずむ音楽 第10回 「スーク/弦楽セレナーデ」

<<   作成日時 : 2012/07/21 21:49  

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第10回「スーク/弦楽セレナーデ」

 ドヴォルザークの娘婿、ヴァイオリニスト、ヨゼフ・スークの祖父として有名なヨゼフ・スーク。だが、間接的に語られるには惜しい名作を残している。それがこの『弦楽セレナーデ』だ。弦楽セレナーデはモーツァルトの『アイネ・クライネ』にはじまって、チャイコフスキー、ドヴォルザーク、エルガー、フックスなど名の通った作品があるけれど、スークの作品をもってして、最右翼としたい。
 チャイコフスキーのシンフォニックな求心力、ドヴォルザークの民俗性への愛着など、それぞれ見るべきものはあるが、どれもどこか玩具っぽい。二つの大きなジャンルの中間にあって、独自の存在意義をなかなか表せずにいるのが、歴史の現実だろう。その点、スークの作品は交響曲のミニチュアではなく、このジャンルの独自性を最大限に発揮している。弦楽四重奏曲や五重奏曲と決定的に異なる合奏のヴォリューム感と官能性、交響曲からは排されがちな遊戯性。モーツァルト以来、100年以上経て、ようやく寄せられた真の解答なのだ。
 まだ10代の作品で、ビゼーのところで言及しても良かったくらいに天才の発露のある、細部にいたるまでイキイキとした魅力に溢れている。とくに第2楽章のゆったりたワルツ風の音楽や第3楽章アダージョの夜の静寂に憩いを求めるような音楽など、長い音楽史上でも一級品の仕上がりを見せている。
惜しむらくは、スークがこの作品にすべての才能を使い果たしたようで、その後、佳作は残しえても、10代の傑作を上回るものを書けなかったことだろう。
 作品の解釈にも恵まれていない。そこそこ人気の作品で、録音点数も少なくない。しかし、どれもどこか野暮ったい。指を折れるのはネヴィル・マリナー指揮、ロスアンジェルスcoしかない。マリナーは録音点数が多く、スタジオ・ミュージシャンのように、その場で無難にこなすことに長けている。悪くはないけれど、特別にいものは少ない、というのが彼への評価に共通する見方だろう。スークの『弦楽セレナーデ』の演奏は、ロスcoの常任指揮者に就任した直後の蜜月時代。緊密な演奏で、細部の魅力を余さず表現し尽している。とくに弦楽合奏の艶やかな官能性はまたとない出来映え。マリナー一世一代の名演。これに耳を馴らされているせいで、ほかのどの演奏を聴いても、満足を得られることがない。

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