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zoom RSS くれなずむ音楽 第3回「アルビノーニ/弦楽とオルガンのためのアダージョ」

<<   作成日時 : 2012/05/12 11:21   >>

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●第3回  アルビノーニ『弦楽とオルガンのためのアダージョ』

 バロック名曲集にかならず入っているポピュラリティの高い曲。何を今さら、という声が聞こえてきそうだ。
 とはいえ、オーソン・ウェルズの『審判』で聞いて以来、アンソニー・パーキンスの所在なげな表情とともに蘇ってくる“哀切”のメロディーはやはり、毎回哀しみを誘ってくれる。なぜかイタリアのメロディーは哀しい。ぐっと堪えて内に湛えた哀しさというような深みを指向したものではない。身も世もない泣き崩れかたではないけれど、他人に泣き顔、涙を見られることを恥じないストレートさ。哀しみの雲の向こうに澄みきった青空が透けて見えている。その青空の深い暗さに孤独感がいや益すというものだ。
 子供の頃、とくに大きな病気を抱えていたわけではないが、学校を休み布団で寝ている子供だった。枕に頭を凭せて仰ぎ見る澄んだ青空の哀しみを重ねてしまう。音楽のストレートさに比べ、こちらの心には鬱屈が折り重なっている。人はなかなか一度覚えた哀しみを忘れることは出来ず、傷を舐めるように同じ哀しみで哀しみを埋めようとする。そうすることで刹那甘さを覚えるのだ。なにを60歳も過ぎて子供の時のことを言っているのだ、と馬鹿にされそうだ。しかし、金平糖が小さな米粉の粒を芯にして砂糖の結晶を育てるように、人もつまらない心の屑を芯として経験の結晶を育てざるをえない。人の心は最初から歪で醜いものと定められたようなもだ。心の球を美しい珠に育てられた人がいたなら、おめでとう、くらいの声は掛けるかもしれないが羨ましいとは思わない。醜い襞にこそ人生の機微が降り積もっている。それを面白いと思わなけばやっていられない。負け犬の遠吠え。
 ドイツ芸術の悲劇重視に荷担するつもりもないが、哀しみの効用があることを認めざるをえない。それに音楽はどうも笑いは苦手のようだ。モーツァルトの『音楽の冗談』にしても、冗談音楽で有名なスパイク・ジョーンズにしても笑えた験しがない。どうしても哀しみに歩があるようだ。
 となれば、哀しみの音楽の中からより優れた哀しみを選ぶことが、“聴くアーティスト”を自称する筆者の仕事である。
 同じイタリアでもベルリーニやヴェルディの大悲劇オペラの絶唱となると、哀しみを大声で説得しているという不思議な図になり、音楽に圧倒されても哀しみを感じることはない。小林秀雄はモーツァルトの『弦楽五重奏曲』のある箇所を“疾走する哀しみ”“涙が追いつけない”と表現した。たしかにアレグロで駆け抜ける哀しみというものはざらにあるものではない。しかし、モーツァルトの哀しみの本領は元気いっぱい楽しさにはしゃいでいる最中に突然姿を見せる奈落。それまでのすべての喜びを投げ打って、飛び込みたくなる慰撫に満ちた奈落。ほとんど人生そのものにたいするアイロニーのような音楽だ。その明るい青空に突然開いた空隙の暗さ、それはイタリア音楽の哀しさに通じているように思う。
哀しみは一番分かりやすい感情であって内容の薄っぺらなものと思われがちだが、存在の哀しみという淵源にも到達する表現でもある。音楽史上、その原点に置きたいのがアルビノーニの『アダージョ』だ。

参考盤:J.=F.パイヤール/パイヤールco
 演奏にとくにこだわりはない。イ・ムジチでもミュンヒンガーでもオルフェウスでもいいだろう。できるだニュートラルで淡々とやってもらいたい。劇的であったりとか、変に甘ったるい抒情性を振りまくのでなければ結構。





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