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zoom RSS くれなずむ音楽「第2回 ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第14番」

<<   作成日時 : 2012/05/06 00:01   >>

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●第2回 ベートーヴェン『後期弦楽四重奏曲』

 ベートーヴェンでもっとも深遠な音楽として同じ後期のピアノソナタとともに、敬して遠ざけられるイメージの強い曲。この時期、フーガが多用され、動機操作も綿密を極め、難解のレッテルが貼られてしまっている。 しかし、聴きようによっては、楽聖の音楽のなかでもっとも親しみやすい音楽ではないかと思う。中期の『運命』『クロイツェル』『ラズモフスキー』などの作品の暑苦しさ、押し付けがましさに比べ、メロディーは初期を思わせるほど純粋で美しいし、リズミカルで躍動的な楽章との対比もコントラストが明確で退屈させない。弦楽四重奏曲が純粋な音楽的思考と言われることがある。それはむしろ先輩ハイドンによく当てはまる言葉。たとえば、リズムを細かく分割して行きストレッタで畳み掛けるとか、♭一つ転調すべきところを二つ転調して緊張をもたらし、次の機会に緊張を解いてみせるなどの、音楽的な思考がユーモアを伴ってしきりに登場する。ベートーヴェンの場合は、そのような思考が自己解説的には作られていなくて、むしろ巧妙に隠され、静かに音楽に付き従って行けば、音楽が作り出すドラマを自然に味わえるように出来ている。
 ベートーヴェンは音楽におけるドラマの創始者である。それはたとえば作品13の『悲愴ソナタ』の第1楽章にすでに典型的に見られる。いくつかの和音を鳴らして、どうにも決め切れずにいるのが、最後に納得いく和音を得た次の瞬間には答えを見い出した喜びに満ちて、メロディーが勢い良く溢れ出す。これほど快感に満ちた音楽のストーリーはない。しかもこれは、ベートーヴェンがピアノで即興演奏している姿の生き写しなのである。霊感に誘われ、生き生きとした音楽が迸る瞬間、その喜び。
 推敲に推敲を重ねて、作曲に時間が掛かることばかり有名になっているが、一方で細部の生き生きとした生命力を大切にしている。そのドライブ力があるからこそ、理屈っぽい作りであっても退屈せずに聴けるのだ。晩年ほど作為は表面に現れず、生のままの迸りが採用されるようになっている。作品119の『11のバガテル』などは即興のスケッチそのもののような曲集だ。『ハンマークラフィア』のような大曲やここで取り上げている弦楽四重奏曲の第13番、第14番、15番あたりにはそのバガテルとの近縁性が感じられる部分がある。
 弦楽四重奏曲は弦だけで耳に優しいという特性もあり、4つの声部の動きが捉えやすいという聴き易さがある。そして、短い楽章が多く、退屈しない。14番や15番は10分を超える楽章はアダージョやアンダンテでゆったりと美しく歌う変奏曲なので、じっくりと聴いても疲れることはない。13番で大フーガをいっしょに聴くと少し疲れるかも知れない。作っているうちに面白くなって巨大化してしまったけれど、この連作の趣味とは異なるから、最終的に終楽章を書き換えたのだろう。
 背景的なことはまあこのくらいにしておいて、曲の楽しみそのものに迫る必要があるだろう。
 代表して第14番。第1楽章の静かなメロディーは、物思いに耽るような曲。退屈との瀬戸際にいる。若い時には、“こういう深遠さがいいんだ”と思い込んで頑張って聴いていたようにも思う。しかし、今は明鏡止水とでも言えばいいだろうか、自分の心の内を静かに映しているように感じるようになった。心の鏡に映る風景は平和なものばかりではないが、それを見る心は波を立てずに静かでいられる。闘争精神に満ち満ちていたベートーヴェンも、晩年、あえて哲学的とは言わないけれど、静けさを求めるようになっていたらしい。真ん中の第4楽章の長い(ほかの楽章が極端に短かったりするので)変奏曲の清澄さは一人深山に踏み入って行くような趣だ。第2、第5楽章は例の『バガテル』のエコーのように聴こえる。とくに第5楽章の終わり方なぞは。第3、第6楽章の短さは一瞬のことでかえって印象が深い。そして最後に置かれたソナタ形式の楽章が、力強くも懐かしさを覚える作りになっている。  名曲の条件の最大のものは、繰り返し聴くことに耐えられること。その意味でベートーヴェンの後期の曲は肉体的、情緒的な感動、動揺から遠く、スケルッツォ的な楽章の動きの速い部分ですら、どちらかというと知的な興味の対象となっている。繰り返し聴いて感じることは、聴くごとに古い友人に出会ったような懐かしさ。しかも自分より能力が高く、親切にしてくれる。優しい気持ちに包み込まれ、臆面もなく向上心などを抱いてしまうのである。静かな心のままで、スックと前を向いて立てそうな気持ちにしてくれるのだ。



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