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zoom RSS 40年代ピアニスト/第15回「アンドレ・ワッツ」

<<   作成日時 : 2012/01/21 14:30   >>

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●『アンドレ・ワッツ』1946〜
※参考盤:「リスト/超絶技巧練習曲」「ショパン/ピアノ協奏曲第2番」「チャイコフスキー/ピアノ協奏曲」「ベートーヴェン/月光」

吉田秀和がたしかスポーツの俊敏性と爽やかさをもたらしていると評したのだったと思う。それ以来、ワッツは内容のない技のキレだけのピアニストということになってしまった。たしかに音楽の世界になかったものをもたらした部分はあった。しかし、それがすべての演奏家ではない。特徴を捉えて伝えることは評論の骨法ではあるけれど、誤解を招いてしまっては元も子もない。
円熟してきた頃、80年代にEMIに録音したシリーズは秀逸で、その演奏のおかげでリストが好きになった。「超絶技巧」でテクニックを見せつけるだけでなく、その先に生まれる詩情に到達している。だから「灰色の雲」「眠れぬ夜」「調性のないバガテル」などリスト最晩年の音楽が美しく響くのだ。詩情の世界にもたれかかることなく、スポーツの爽やかさを維持しながら詩を聴かせるというバランス感覚はワッツ以外になしえた人はいない。
その当時のライヴ盤でハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルトを弾いたものがある。そのなかの「月光」の可憐なリリシズムはスポーツとは無縁の優しい慈しみが感じられる。
デビュー当時のショパンの「協奏曲第2番」がギレリスの演奏した「第1番」とカップリングで復刻された。それを聴くと、ギレリスに比して少し一本調子には感じられるが、「第1番」の後に聴くということをしなければ十分に抒情が息づいた演奏。伴奏のシッパースがむりやりドライブしている感もあるので、ワッツ本人は若いときから十分に詩的な能力が高かったのではと思われる。
90年代以降になってくると、身体もでっぷりとして、指の動きもややキレを失いつつある。その代わりに得たものは大らかな円満さ。「チャイコフスキー/ピアノ協奏曲」は悠揚迫らざるスケールの大きさはあるけれど、やや緩慢に感じる部分もある。しかし、カップリングの「サンサーンス/第2番」では円満さがいい方に展開してギャラントな楽しさを満喫できる。ちょっと渋い存在になってきたかもしれない。

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