B面クラシック くれなずむ音楽

アクセスカウンタ

zoom RSS 40年代ピアニスト/第10回「ヴィルソラーゼ、グード、フレイレ」

<<   作成日時 : 2011/12/17 19:12   >>

トラックバック 0 / コメント 0

●『エリソ・ヴィルソラーゼ』1942〜
※参考盤:「メンデルスゾーン/チェロソナタetc.」「ショパン/練習曲」

 パワーもテクニックも詩情も持ち合わせた人だとは思うけれど、どこかリズム感なのか、個人的な癖を感じてあまり好きになれない。とくにショパンを聴いたときにその感が強かった。オレグ・カガンやナタリア・グートマンと共演したメンデルスゾーンではスッキリと力強くまとめているので、ソロの時自己主張をすると、思いが強くなりすぎるということなのだろう。

●『リチャード・グート』1943〜
※参考盤:「ベートーヴェン/ピアノソナタ第5〜7番」
 一部に圧倒的な支持者を持つベートーヴェン弾きとして名高い。たった1枚聴いただけだが、きっちり弾けているという以上の印象はない。

●『ネルソン・フレイレ』1944〜
※参考盤:「リスト/ピアノソナタ」「シューマン/謝肉祭」「グリーグ/ピアノ協奏曲」「ヴィラ=ロボス/赤ちゃんの一族etc.」「ショパン/ピアノソナタ第3番etc.」「ベートーヴェン/ヴァルトシュタインetc.」「ドビュッシー/前奏曲etc.」

 ゲルバーと同様、昔風に自分の感覚をそのまま疑うことなく演奏するピアニスト。ゲルバーが古い時代の解釈、アゴーギグを忠実に踏襲するタイプで、一音一音の音価は正確に再現されるのにたいし、フレイレはどんどん弾き込むことで身に付けた運動感覚でリズム処理していて、音価がかなり伸び縮みする。その辺り少し芸人風のところがある。
 しかし、音楽の捉え方には天才的な閃きがあり、開始のたった1音で聴衆を惹き付けてしまうだけの力量がある。たとえば「リスト/ピアノソナタ」。最初の単音、ズンという響きはスタッカートに近い弾き方なのに、力強く太く豊かに鳴り響く。たとえば「グリーグ/ピアノ協奏曲」。最初のなだれ落ちる音階の迫力はフィヨルドの谷に崩れ落ちる氷河のよう。
 ゆったりとした恰幅の良さは若い時からで、「シューマン/謝肉祭」など基本的なアプローチは60歳になって入れた2回目の録音でもほとんど変わっていない。落着きとある種の興奮が同居する堂々たる演奏。一つひとつのフレーズが生き生きとしたリズムに彩られて躍動感に満ちている。この野太いとも言える生命感こそがラテン・アメリカの存在証明か。ガルシア=マルケスなどの文学にも通じる魅力ではないだろうか。それは「ヴィラ=ロボス/赤ちゃんの一族etc.」にいたって、キラキラとした原色のめくるめき世界が展開されているし、徹底して快感原則が貫かれている。
 録音世界では、アルゲリッチとの共演を除けば長らくご無沙汰だったが、60歳近くなって、DECCAと契約し、次々に録音を行うようになった。
 それが、どれも見事な出来映え。シューマンやショパンでは若いときそのままの意気軒昴さに加え、落着きと見通しの良さが得られいて、なんとも爽やかだ。「ベートーヴェン/ヴァルトシュタインetc.」では、一音一音から喜びが溢れるような演奏で色香すら漂う。「ドビュッシー/前奏曲etc.」ではソノリティに深く聴き入るような演奏で、自然におとぎ話が紡ぎ出されるほどに、親しみがあり、優しく響く。
 フレイレほど人間の温かみを感じさせるピアニストは稀だ。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

40年代ピアニスト/第10回「ヴィルソラーゼ、グード、フレイレ」 B面クラシック くれなずむ音楽/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる