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zoom RSS 40年代ピアニスト/第4回「アルゲリッチ」

<<   作成日時 : 2011/10/22 12:30   >>

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●『マルタ・アルゲリッチ』1941〜
※参考盤:ショパン「ビアノソナタ第3番etc.」/ラヴェル「夜のガスパールetc.」/シューマン「クライスレリアーナetc.」/バッハ「イギリス組曲第2番etc.」/ハイドン「ピアノ協奏曲」

 言わずと知れた女傑。長い髪を振り乱し天を仰ぎ、身体を前後左右に大きく揺さぶる身振りの大きな演奏姿は、男をとっかえひっかえする生活ぶりと共に、奔放なイメージを作り上げている。
 たしかに、ショパン・コンクール優勝後に録音したアンソロジーやショパンのアルバムでその奔放さ、“テンペラメントの輝き”とも称される部分がはっきり聞き取れる。音楽の山場となるところでの身も世もない激しい表情と打鍵のきらびやかさ。圧倒的な魅力を振りまいてくれる。ラヴェルやプロコフィエフの協奏曲でも同じことが確認できる。「夜のガスパール」などは他の追随を許さないほどの研ぎすまされた表現、感性のきらめきが充満し、緊張感も快い。しかし、その豪放なまでの表現には響きの汚さという限界を抱えていたようだ。
 太い腕、親指や小指についたたっぷりの筋肉で強い打鍵を手にしているものの、高音の響きは冷静に聴いてみると意外なほどに細いし、円やかなゆとりに欠けている。ラヴェルでは持てる音色と音楽の内容がピタリと合致していたが、シューマンを弾く時には、メロディーの繊細な表現に利用しているものの、ショパン以上に分厚い響きの前にスケールの小さな表情になり、奔放さは影を潜めている。とくにPLATZ盤の「幻想曲」に著しい。響きの薄いハイドンの曲では可憐な音色で、スケールの小ささがむしろ時代様式に適合していて好ましい。ベートーヴェンのヴァイオリンソナタ、チェロソナタも含めて、古典派以前の音楽では大きく様式を崩すこともなく、生き生きとしたリズムで音楽を賦活させている。
 最近に至ると、テレビなどで聴くかぎり、ますます腕力、指力がなくなり、コツコツと貧しい響きになり、音色的な美しさは期待できなくなっている。生来の練習嫌い、ソロの緊張嫌いで室内楽を活動のメインに据えたための結果かと思っていたが、いま歴史を辿って聞き直してみると、すでに80年代から力の衰えが見え始め、パワー全開の必要のない曲を選んで録音するようになっているように感じられる。たとえば、デュトワと組んだショパンの協奏曲は人気は高いけれど音の汚さは聴けたものではない。
 今楽しむとすれば、カピュソン兄弟たち音楽仲間を集めたシューマンの室内楽集のようなもの。仲間うちのノリで楽しく過ぎてしまうものが適しているようだ。

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