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zoom RSS コヴァセヴィッチ楽派宣言51 ベートーヴェン/『熱情』他

<<   作成日時 : 2010/10/09 23:06   >>

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No.48 『ベートーヴェン/ピアノソナタ“熱情”』
    ピアノソナタ第23番ヘ短調Op.57“熱情”
    ピアノソナタ第22番ホ長調Op.54
    ピアノソナタ第25番ト長調Op.79
    ピアノソナタ第4番変ホ長調Op.7
    EMI 5569652 99年2月録音

 EMIに復帰して14枚(オーストラリア録音含)、ずっとなんらかの形で再録の曲を含んできた。すでに馴染んだ曲を道しるべとして、未開の地を歩んでいくような慎重さをつづけてきた。50歳を越えたベテランではちょっと考えられないような初な態度。
 15枚目にしてついに完全オリジナルの選曲となった。録音点数が少ないためにストックが払底したということもあるけれど、完全オリジナルに“熱情”を持ってきた意気込みの強さというものもしっかりと感じ取れる。32曲のなかで、精神的なコントロールだけでは弾き切ることのできない数少ない曲。“ハンマークラフィア”も同じ傾向があるけれど、燃焼度の高さでは“熱情”が上だろう。全身全霊を投げ打ってすべてを注入するという気迫がないと、この曲だけは形をなさなくなってしまう。その気迫の表れが、すべてをコヴァセヴィッチにとっての新曲で固めた選曲なのだ。

【ピアノソナタ第23番“熱情”】
 第1楽章、タタタターという“運命”と共通するテーマが不穏な空気をまき散らす。開放ペダルで低音を豪放なまでに鳴らす。大きなうねりを作り出し、うねりごとに音量を増大していく迫力が音楽に緊密な力を与えている。
 第2楽章、ゆるい低音、緊張からの解放。最高音近くまでつづく長いスケールが美しい。ただの音階なのにリズム感と微妙な強弱で美しく聴こえる。
 終楽章、回転の激しさ。地の底からひっくり返そうとしているのかと思うほど。いったんpになった後、またさらにジワジワと追い立てていく。コーダに向かって加速、増強して驀進。最後はfffffが数えられないくらいの高みに、何段階も執拗に駆け上がる。たたみかけてくるような、見事な集中、そして燃焼。
 ベートーヴェン中期の押し付けがましさの代表的な存在だが、徹底することで一つひとつのフレーズに納得感、説得力が得られ、嫌みが熱誠に昇華される瞬間を体験できるだろう。

【ピアノソナタ第22番】
 第1楽章、低音の不穏さ、高音の可憐さ。加えて中音の平静さ、これがあるから客観的な目のようなものが曲の中に出来上がっていて、わざとらしい構成も嫌みなく聞こえるのだろう。
 終楽章、不思議な和音。不安定で方向も定まらない。それを突っ切る前進力がぎりぎり音楽の枠に繋ぎ止めている。すでに、晩年の実験的な作風が胚胎しているようだ。

【ピアノソナタ第25番】
 第1楽章、一つのテーマのなかにいくつもの気分が混在している。曲調は安定しないのに、確固とした意思で前へ進もうとする安定した前進力に支えられている。
 第2楽章、シューベルトの歌曲を思わせるすぐれた歌謡性。
 終楽章、おどけた楽しさ。
 明らかに後期の作風に近付いている。ここに欠けているのは瞑想性。第2楽章の歌にとって代わられた。ベートーヴェン本来の歌は、第31番のカンティレーナのようにもう少し崇高だ。コヴァセヴィッチはここではその違いを明確にし、あくまでシューベルト風に弾いている。

【ピアノソナタ第4番】
 第1楽章、アルペジオの美しさ。小カデンツの思い切り。突然ドスンと終る形に意外な納得感がある。
 第2楽章、力強いメロディー、低音がヒタヒタと迫る。
 第3楽章、低音の轟き、ドラマティックな盛り上がりのなかにもどこか平静で冷ややかな部分がある。
 終楽章、軽やかさと力強さで一気に駆け抜ける。
 初期の名作だけど、“熱情の”クールダウンにもってこいのレベルなのを実感する。

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