B面クラシック くれなずむ音楽

アクセスカウンタ

zoom RSS コヴァセヴィッチ楽派宣言47 ベートーヴェン/ピアノソナタ第30番他

<<   作成日時 : 2010/09/11 12:22   >>

トラックバック 0 / コメント 0

画像
No.44『ベートーヴェン/ピアノソナタ第30番』
    ピアノソナタ第30番ホ長調Op.109
    ピアノソナタ第12番変イ長調Op.26
    ピアノソナタ第19番ト短調Op.49-1
    ピアノソナタ第20番ト長調Op.49-2
    バガテルOp.126
    EMI 5561482 94年12月 95年6月 96年3月録音

 コヴァセヴィッチが全集主義者ではないと前回も書いた。普通、ソナタの全集を敢行しているアルバムの中に“バガテル”を差し込むようなことはあまりしないだろう。本来、夾雑物として斥けられる。全集完了時にボーナス盤として録音されることはあるかもしれない。しかし、このアルバムはほとんどリサイタルのプログラム・ビルディングに等しい。前半重めに入って、休憩後、軽い曲をつづけ、最後にスタートの曲に匹敵する精神的な高さを持ちつつ、ソナチネと同等の軽さも合わせ持っているバガテルを選んで来た。面白いけれど、苦心の跡の見えるプログラムでもある。
 これまで、曲から曲へのつながりの良さ、あるいは最初からセットの曲集というまとまりの良さでアルバムを作って来たけれど、今回はつながり自体は希薄になっていて、大きなくくりで逃げた感もある。
 最初に10枚のCDへの曲の割り振りを考えた時に、第30番があまってしまったのではないかと想像している。平均60分余りの収録時間なので、詰め様によっては9枚にまとめられたかもしれない。それでも、かたくなに収録曲の重複を敢えて選んで、後にもう一度出て来ることになる第12番、第19番、第20番を採用、バガテルの援軍も頼んだという、全集の姿としてはまとまりの悪さを晒すことになった。これは“ハンマークラフィア”の盤に“バガテルOp.119”を入れることが必須と考えたことから生じた軋轢だろう。ここに第30番を入れておけばすべてが丸く納まったはず。それをしないのがコヴァセヴィッチなのである。

【ピアノソナタ第30番】
 第1楽章、憧れに満ちた美音。惚れ惚れと聴いていて一瞬のうちに過ぎてしまう。
 第2楽章、 例によって激しいタッチと、キレのいいリズムが同居している。
 第3楽章、遅い。延ばした音の美しさが尋常ではない。丸い音なのにけして濁らない。盛り上がった音楽のなかでも、すべての音が繊細なタッチで扱われている。
 3度目の録音で美しさと激しさの落差は一番大きくなっているように感じるけれど、逆に一体感も増しているように感じる。

【ピアノソナタ第12番】
 第1楽章、リズムの生命力が素晴らしい。とくにリズムを分割していくところなどは水際立っている。
 第2楽章、鋭さと、転がるような愉しさが対比ではなく違和感なく同居している。
 第3楽章、葬送行進曲。重く踏みしめる足取り。中間部での儀式的な身振りは、葬送の主が一廉の人だったことを表している。
 終楽章、流れ落ちるような流麗さ。それを受け止める音の強さ。ここでも、一般的に対比的に捉えられる音が対比ではなく、共同するように働いている。
 この捉え方こそ、コヴァセヴィッチ一流のもので、音楽を構造分析で理解するのではなく、実際に鳴らし、自分の耳で聴いた音楽の成り立ち、生き生きとした音楽の奔流をいかに蘇らせるかの知見であり、特別の技術のすべてを注ぎ込むパフォーマンスによるものだ。

【ピアノソナタ第19番】
 初期に作っていたソナチネを今頃になって掘り返してきて出版したアルバイト感覚で世に出た作品。同じ初期のソナタでも“選定侯ソナタ”は取り上げなかったコヴァセヴィッチだが、やはり番号付きとなると無視できなかったようだ。端正に丁寧に表情大きく演奏している。
 第1楽章、可憐。
 第2楽章、明るく元気。

【ピアノソナタ第20番】
 第1楽章、小粋で可愛く美しい。
 第2楽章、例の七重奏曲のメヌエットとテーマが同じ。小気味よく、強いキレ味。

【バガテルOp.126】
 PHILIPS時代の演奏と比較してゆっくりの曲ではよりゆっくり。ゆったりとした抒情が湧き出して来るのを待っている。テンポの速い曲ではより速く。即興的に生まれてきた音楽の勢いが再現され、より粗野な生命力が強調されている。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

コヴァセヴィッチ楽派宣言47 ベートーヴェン/ピアノソナタ第30番他 B面クラシック くれなずむ音楽/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる