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zoom RSS コヴアセヴィッチ楽派宣言45 ベートーヴェン/ピアノソナタ作品31

<<   作成日時 : 2010/08/28 21:44   >>

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No.42『ベートーヴェン/ピアノソナタOp.31』
    ピアノソナタ第16番ト長調Op.31-1
    ピアノソナタ第17番ニ短調Op.31-2“テンペスト”
    ピアノソナタ第18番変ホ長調Op.31-3“狩り”
    EMI 5552262 94年7月録音

【ピアノソナタ第16番】
 ベートーヴェンの作品の中でも指折りの不出来な作品。魅力的なテーマがこれほど見当たらない作品もめずらしい。しかし、コヴァセヴィッチの演奏で聴いてみると、作曲家の名作を生み出すための仕掛けを絵解きするように教えてくれる。スケールをさらっているときにフッと面白いアイデアが浮かんで音楽の構成が出来上がっていくライブ感。ベートーヴェンの作曲が熟考型と伝えられて来ているけれど、それは全体の整合性を勝ち得るまでの行程の話であって、要素と要素の対比、ある音形から溢れ出してくる次の音形などはすぐれて即興的で、細部に生命力があるからこそ全体が生きている、構成の苦労の跡が見えなくなっているというべきなのだろう。
 第1楽章、ずっとスケールのおさらいをしているような曲なのにイキイキと聴こえる。音楽の勢い、走り出す方向、気持ちを汲んでいて、新しく現れる音形の出現が嬉しく愉しい。ときにはハッとさせられる。まずなにより、スケール自体が美しく響いていることが、この曲のつまらなさを救っているのだろう。
 第2楽章、スケールとトリルのなかに平安な歌をゆったりと歌わせている。
 終楽章、スケールは後退して、第3楽章らしいのぴのびと走り出したくなるようなメロディーが中心。

【ピアノソナタ第17番】
 第1楽章、試し弾きかと思ったら一気呵成。第16番で創作の秘密を垣間見ているので、ここの音楽の湧出も深く納得できる。高音のトリル、低音のズシンと響く音、ゴーゴーと轟く音が嵐の凄まじさを思わせる。一瞬のルフトパウゼがあって、音楽が元へ戻る仕切り直しの、まさに息を呑む美しさ。
 第2楽章、嵐の後の暖かい陽射し。
 終楽章、一音一音の弾みの豊かさ、スケールの快感、連打音の圧迫感。物理的な刺激に過ぎないはずなのに、心は遥か彼方に連れ去られている気分がする。

【ピアノソナタ第18番】
 第1楽章、PHILIPS時代に比べて、少し速めで遊戯性が高まり、リズムのキレも増しているようだ。
 第2楽章、ゆったり大らかな気分。
 第3楽章、ハーモニーの上で延ばす音が濁らずに繊細に奇麗に響く。その美しさに酔っていると、決然としたffに根こそぎ揺すぶられてしまう。
 終楽章、圧倒的な勢い。
 これほど、動きの愉しい曲も少ない。文学性のない、純器楽的な発想と、音の並び自体にユーモアを感じるという点ではハイドンに近いけれど、強さと激しさ、スケールの大きさ、美しさでこれはもうベートーヴェンにしか書けない曲だ。
 音楽のドラマを作ったというところがベトーヴェンの画期的な作風になるわけだけど、文学性を含まず、ハイドンをはるかに凌駕しているのはこの曲にとどめをさす。その特別な曲にコヴァセヴィッチの思い入れも強い。一つ一つのリズム、音形の表情、響きの柔らかさ、伸びやかさなど、隅々まで魅力に満ちあふれている。

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