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zoom RSS シュミット、フランツ

<<   作成日時 : 2006/08/15 22:43   >>

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シュミット、フランツ
(1874〜1939)
(200)ピアノ五重奏曲第1番ト長調(左手のための) 

 200曲目を迎えたところで、またもや暗い話題に触れなければならない。作曲家本人はウィーン的な悦楽と対位法の融合に平和な安住の地を見い出してたのだけど、晩年に至ってナチスとの関係を取りざたされてしまう。ウィーン音楽アカデミーの院長という要職にあって組織を守ろうとすれば妥協もしてしまう。それが地位に恋々としたとして非難されるとすれば、芸術家はつねに身を捨てる覚悟でなければならないことになる。戦後、彼に対する評価は長らく冷たかった。そういう意味では不幸な作曲家というイメージが出来ているかもしれない。
 有名な作品が「7つの封印の書」という聖書がらみカンタータのような作品。これもイメージを重くしている。オペラ「ノートルダム」の間奏曲がアンコールピースとなっていることや、4曲の交響曲、大量のオルガン曲のために、ぎゃくに、よく出来た室内楽を楽しむ機会を減らしているかもしれない。
 74年といえばシェーンベルクと同年の生まれ。前衛の最前線を走ってもおかしくない。すでにマーラーが登場し、ツェムリンスキーなどの先輩もいる。独奥以外ではドビュッシー、スクリャービン、ヤナーチェクなどが活躍している。それでもシュミットは少しも前衛らしいことをしなかった。時代の子で、「7つの封印の書」では表現主義的などろどろした激しさを見せているが、彼の本来の性向はレハールに通じるような耽美主義の世界に居るように思う。ウィーン全体がゲミュートリヒカイトで生きていたのだから当然か。翌年に生まれたクライスラーの弦楽四重奏曲とはほとんど親戚のような音楽だ。
 この作品は記号学のヴィットゲンシュタインの兄でピアニストのパウルが戦争で右腕を無くしたために、左手だけで弾ける曲を依頼しまくった作品のうちの一つ。ラヴェルの協奏曲やプロコフィエフ、コルンゴルトなどが有名だけど、まだリヒャルト・シュトラウス、ヒンデミット、ブリテンとビッグネームが続く。彼の生家は実業家で裕福だった。ちなみにシュミットはほかにも、独奏楽器にクラリネットを加えた五重奏曲などいくつも書いている。
 シュミットの作品目録を見ていないので室内楽がどくらいあるのか知らないで無責任に言っている(オックスフォードの音楽事典は図書館に販売制限しているらしくて、大部のものを買わなければならないのは、ちょっとつらい。小学館から日本語版がでるという噂もあったけれど、販売法に制限を加えられて頓挫したんじゃないかな)のだけど、さらにもう一つクラリネット追加五重奏曲、2曲の弦楽四重奏曲など、どれも水準が高くて室内楽での素質の良さを示している。もっと積極的にレパートリーを拡大したいところだけど、いまのところ標題曲が頭抜けて録音点数が多い。たまたま、右手を長らく故障していたレオン・フライシャーが録音したものがあるので、それを推薦盤にしておく。たしかベロフも右手、館野も右手、故障の理由は様々だけど、ピアニストは右を故障しやすいらしい。左手を故障すると右手だの曲がないだけに困るだろうね。
 もうひとつちなみに、ブルックナーの弟子らしいのだけど、交響曲からあまりブルックナーらしさを感じない。ブルックナーらしさはどうやら対位法や構成にあるのではなく、テーマそのものが持つ田舎らしさ、よく言えば自然観によるものだろう。シュミットは根っからの都会っ子というところか。もし師匠に似ていたらもっと苦労したかもしれない。でも、今頃評価は雲泥の差になっていたかも。やれやれ、人生は難しい。

フライシャー/マetc.「ピアノ五重奏曲第1番」SONY SRCR2169

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